写真=娘のあすかさんについて語る恭子さん

 2021年度第1回市民教養講座が23日、御坊市民文化会館大ホールで開講。発達障害のピアニスト野田あすかさんの母、野田恭子さんが「発達障害の娘との30年」をテーマに語った。

 まず、あすかさんの初コンサートの映像が流れ、オリジナル曲「手紙~小さいころの私へ~」が演奏された。続いて恭子さんが登場。現在39歳でピアニストとして活躍するあすかさんが、22歳で発達障害と診断されるまで「人と同じことができない」と悩み続けた日々を母の立場から率直に語った。小学生の時から成績では優等生だったが、相手の気持ちが分からない、場の空気が読めない、言葉を言葉通りにそのまま受け取るなどの問題があり、トラブルばかり起こしていたあすかさん。成長するとストレスから自分の髪の毛を抜いたりリストカットをするなど、自傷行為をするようになり、精神科を受診したが医師にも治療方法が分からず、状況は改善しなかった。ウィーンへ短期留学中に過呼吸の発作を起こして病院に運び込まれ、そこで初めて発達障害であることがわかった。生まれつきの障害と分かったことで両親は落ち込んだが、あすかさんは「長年の謎が解けた。努力してもできないのは私のせいではなかった」と明るい気持ちになった。恭子さんはピアノの恩師田中幸子さんがあすかさんに言った「あなたの音は素敵ね。あなたはあなたのままでいいのよ」という言葉を紹介。あすかさんはこの言葉をきいて、「救いの光と感じた」という。講演のところどころであすかさんの演奏する映像が紹介され、来場者はあすかさんの歌うような生き生きした演奏に聴き入った。恭子さんは最後に、あすかさんが「10年後の私へ」と書いた手紙を紹介。「私のピアノでもっとみんなに幸せを感じてもらえるように」との言葉を受けて「そうなっているように、家族でしっかり支えていきます」と話し、大きな拍手が送られた。