先日、大成中学校で行われた道成寺の小野俊成院主による講演会を取材。同寺本堂の建て替えや2代目釣り鐘を寄進するなど功績のある逸見万寿丸(へんみ・まんじゅまる)について紹介された。

 今年は万寿丸生誕700年でこれを記念して、2代目釣り鐘の里帰りのほか、万寿丸が寄進したと考えられている秘仏千手観音の中開帳や能楽「道成寺」を元にして作られた琉球組踊「執心鐘入」の上演などイベントが目白押しで、これらのイベントについても案内された。同寺の秘仏千手観音は、通常33年に一度開帳されるが、今回特別に中開帳として16年半ぶりに公開されている。この秘仏の話が印象的だった。

 小野院主は秘仏を「会えないさみしさを理解してくれ、見えないところから心の絆を深め導いてくださる仏様」と紹介。人生のなかで中学時代の友人と過ごす時間は短くて貴重であることなども織り交ぜながら「かけがえのない大切な人と参ると、次の御開帳のときにもまた会わせてくれます」と話した。年齢によって年月の長さの感じ方は異なり、中学生にとって次回御開帳(16年半後)はこれまで生きてきた時間よりも長い。そんな先のことでも大切な人を思い浮かべてか、真剣に耳を傾けていた。そして16年後60歳になっている筆者の心にもとても響き「会いたい人に会える毎日を過ごしていたい」と思った。

 新型コロナの影響で昨年から、会いたい人に会えずにいた人も多いだろう。そして、どんなに会いたくても2度と会えない人もいる。中開帳は11月28日まで。会える人はこの機会に一緒に、会えない人は会いたい人に会いに行く気持ちで参拝し、その人との絆を感じられればと思う。(陽)