まだまだ残暑が厳しいが、稲刈りが済んだ田んぼの畔には真っ赤な彼岸花が満開。季節は夏から秋へと移り、栗、梨、ブドウ、サンマなどがおいしい季節となった。中でも松茸は秋の味覚を代表する王様。今年も全国各地の山間部で採れ始め、季節の話題として新聞やテレビでニュースとなっている。

 日高地方もかつてはたくさん生えていた。40年以上前の小学生時代には学校の給食に登場した記憶があるし、松茸山を入札して家族で松茸狩りを楽しんだ思い出もある。その当時はコンテナに何杯も採れた。父親から「1本の松茸を見つけても急いで採りに行ってはダメだ」とよく言われた。かたまって生えているため、急いで走っていくと誤って他の松茸を足で踏んでしまうからだ。

 それほど多かったが、近年、日高地方ではほとんど出荷がないという。減少の要因は石炭や石油がエネルギー源として普及したことで、燃料を山林に依存しなくなり、落葉枝が放置されることで森林の土壌が肥えたこと。その結果、松茸にとっては生育しにくい環境になった。

 林野庁の資料によると、56年前の1965年の国産の価格は1㌔当たりで1591円だったそうだが、今となってはその値段だと国産を1本さえも買うことは難しい。秋の味覚の1つとはいえ、高価な食材。今年は8月の長雨の影響で豊作傾向と言われるが、それでも庶民にはなかなか手が出ない。価格も王様といえるだろう。

 インターネットの料理サイトでは松茸もどきご飯などの作り方が掲載されている。本物の松茸を食べることより、松茸もどきのおいしい食べ方を調べる方が良さそうだ。  (雄)