活字中毒にはうれしいイベント、ブックリサイクル。図書館が保管期間の過ぎた書籍・雑誌を一般に無償で提供するイベントだ。今年も御坊市立図書館のブックリサイクルが行われ、取材したほか個人的にも申し込んで参加した◆かなり以前にも本欄で書いたが、学生時代を過ごした京都の図書館では一度だけ、借りた本にびっしりと誰かの書き込みがあって腹立たしい思いをしたことがある。書き込みというよりは「添削」のように、たとえば「目線」とあれば全部「視線」に直し、ら抜き言葉も直し、欄外に「なんて稚拙な文章だ」と感想まで書きつけている。興をそがれることおびただしく、消しゴムを買ってきてきれいに消してから返却した。カウンターで一言注意を喚起したかったが、気が小さいので何も言わずに済ませてしまった◆そのような、他の利用者にも作者にも失礼な書き込みは論外だが、フリーマーケットなどで手に入れた小説でよく目にする、以前の持ち主が感銘を受けて引いたらしい傍線には好感を持ってしまう。「本は天下の回り物」という言葉はないが、一冊の本が複数の人の心を捉えるのは素晴らしい◆総務省の5年ごとの調査によると、和歌山県の県民は47都道府県で一番読書をしないという憂慮すべき結果が出ている。毎年のブックリサイクルではそんな憂慮を吹き飛ばすような、小さな手に重い図鑑や本を山ほど抱えた子どもたちの姿もみられていたのだが、昨年、今年と続けて密を避けるため分散開催。会場に人が少なくて少し寂しかった◆立派な背表紙を見せて並ぶ全集本も、開いて中身に触れてもらわなければ存在意義がない。大勢の人が「密」を気にせず読書イベントを楽しめる世の中に、早く戻ってほしい。(里)