政局の秋となった。ここは派閥のトップの意向に従うべきか、自らの政治信条を貫くべきか、黙って考えは口に出さず流されるのが得策か。党の新たな顔選びに、自民党議員は腹の探り合いが続いている。

 総裁選には岸田前政調会長のほか、河野行政・規制改革大臣、高市前総務大臣らが出馬に意欲を示している。まだ候補者の顔ぶれははっきりしないが、時はまさに有事であり、国民の命を守り、揺るがぬ国家観を示したうえの論戦を期待したい。

 1951年、サンフランシスコ講和条約によって日本の主権が回復。その4年後、保守政党の自由党と日本民主党が合併し、自由民主党が誕生した。目的は戦争で疲弊した経済の回復と、真の独立の象徴である憲法の改正だった。

 以来、66年もの長い時間が経過し、日米同盟を基軸に経済は驚異的な成長を遂げた。しかし、憲法についてはいまだ一度も改正どころか、提案すらされたことがない。国民の意識は高まっているとはいうものの、国会の議論は進んでいない。

 理由には野党の非協力もあるが、それ以上に自民党自身の問題も小さくない。現実の危機を直視し、歴史と文化、伝統の上に秩序を守り、国民が国家に誇りを持てる政治、国づくりを進める保守政党ではなかったのか。

 安倍政権の政策を引き継いでスタートしたはずの菅政権のこの1年、コロナのドタバタの裏で中国の人権侵害を非難する国会決議が見送られ、選択的夫婦別姓の導入や性的少数者(LGBT)への理解増進に関する議論に時間を費やした。

 野党のふがいなさに助けられつつ、岩盤支持が揺らぎ始めた自民党。党内の原因分子を見極め、抑える力と気概を持った総裁を選出しなければ日本の未来はない。(静)