先日、大阪市西成区のこども食堂の子どもたちが印南町を訪れ、磯遊びや野菜収穫を体験したのは既報の通り。いろんな人のやさしい思いが一つにつながり、海を見たことのない子どもたちに海を見せてあげることができた今回の旅行はよい取り組み。筆者らが普段当たり前に思っている景色や体験も、都会の子どもにとっては新鮮なようで、笑顔があふれていた。コロナ禍の中での府県間をまたぐ移動となったが、主催者によると、マスクや消毒の感染対策を徹底し、活動も基本は屋外。関係者以外との交流や接触もなく、感染拡大のリスクは低いのではないだろうか。

 いい話に水を差す気は毛頭ないが、子どもたちのひと言が気になった。それは海へ歩いて行く途中にあった県管理河川の「富の川」を見て、「ゴミがあって結構汚い」というつぶやき。確かに川岸にはペットボトルやビニール袋など、結構な量のゴミが散乱していた。数日前まで大雨が降っていたので、おそらく海の漂流ゴミが河川に逆流してきたのだと思われるが、田舎のきれいな景観を思い描いた子どもたちの期待を裏切ってしまったのではないだろうか。

 ゴミの問題はいまに始まったわけではなく、こういった海洋の漂流ゴミは、結局は一人ひとりがポイ捨て禁止の意識を一層高めていかなければならないというのは言うまでもない。ただ、光川には熊野古道九十九王子の一つ「斑鳩王子」があり、「富の王子」と呼ばれる別名は富の川に由来。アフターコロナを見据えながら、そんな歴史や由緒ある河川を、訪れた人に自信を持って見てもらえるよう、地元で美しく守っていく活動が必要なのかもしれない。(吉)