東京オリンピックでは、連日のメダルラッシュ。当初は開催に異議を唱える声も聞こえてきたが、選手たちの頑張りで、閉塞感しかなかったこの1年半を吹き飛ばすような活気に包まれている。それもすべて、1年延期になっても、開催されないかもしれなくても、選手たちが心折れることなくひたむきに努力を重ねてきた結果だろう。そうして獲得した金メダルにかじりついた市長がいた。

 ソフトボール日本代表として優勝した後藤希友投手(20)が地元名古屋市役所を表敬訪問した際のこと。競技後の表彰式でも感染対策のため、首にメダルを掛けるのは、自身やチームメイト同士で行っているのに、河村たかし市長(72)は「せっかくだから首にかけてほしい」とリクエストし、後藤選手にメダルを首にかけてもらった。そして次の瞬間、マスクを外し、ガチッと音を立てながら、金メダルをかんだのだ。後藤選手は笑うほかなかったが、このあまりの非常識な振る舞いに世間やアスリート、芸能人たちからも批判の声。河村市長は、「最大の愛情表現だった。迷惑をかけているのであれば、ごめんなさい」とコメントを出したが、むしろ批判はヒートアップ。市には4000件を超える抗議や苦情が寄せられ、後藤選手が所属するトヨタ自動車も「アスリートへの敬意や賞賛、また感染予防への配慮が感じられない。不適切かつあるまじき行為」と抗議した。

 その後、河村市長は謝罪会見をしているが、批判は広がるばかり。感染対策以前に、そもそも他人のものを口にふくむなんて非常識。ウケを狙ったのか、何をしても許されると勘違いしているのか。リーダーになる人こそ「相手の気持ちを考え寄り添う」人としての能力を身に付けてほしいものだ。 (陽)