今春、和歌山市七番丁の伏虎中学校跡地に完成した県立医科大学薬学部キャンパスは、4月の開設から3カ月が経過した。1期生100人は新型コロナの影響で入学後すぐにオンライン授業となり、真新しい校舎も閑散としていたが、感染者の動向をみながら先月21日にようやく対面授業が再開。白衣姿の学生たちが実習に取り組むなど、少しずつ本来の大学の日常が戻りつつある。

 県立医科大薬学部は高い実践能力を持ち、地域で活躍できる薬剤師、国際的に活躍できる薬剤師科学者の養成を教育目標とし、関西の国公立大としては京都、大阪に次いで3校目、公立では初の薬学部として誕生。第1期生100人は女性が約7割を占め、地元和歌山は27人、遠くは北海道、中国地方など全国から学生が集まり、4月6日に入学式が行われた。しかし、新型コロナのため19日からは原則オンライン授業となり、最先端の器具、設備を備えたキャンパスに学生の姿はなく、施設内は教職員が行き交うだけの毎日が続いていた。

 この間、器具を使った実習も行われなかったが、対面授業が再開された先月21日以降、時間割を変更し、参加する学生を半分の50人に減らすなどコロナ対策をとって実施。今月8日には学生たちが3、4人ずつの班に分かれ、フラスコやビュレットと呼ばれる器具を使い、金属イオン濃度を測定する実習に取り組んだ。

 御坊市出身の青木裕也さん(18)は「数年前に家族が病気になったときに、病院の薬剤師さんが薬の作用などについて、不安がなくなるまで親切、丁寧に説明してくれました。その時のことが心に残り、病院薬剤師(病院で勤務する薬剤師)を目指そうと思いました。あの時、親切にしてくれた薬剤師さんのようになりたいです」。大阪府出身の川俣遥香さん(19)は「薬剤師は病院だけでなく、化粧品メーカーや公務員など幅広い分野で活躍していることを知り、興味を持ちました。対面の授業が再開したばかりですが、友達もできて、少しずつ楽しい大学生活になってきました」と笑顔で話してくれた。