長い梅雨が明けるのもそろそろか。ジメジメと蒸し暑く、わが栄光の阪神タイガースも主力のバットが湿りがちだが、海の向こうのスーパースター、エンゼルスのショウヘイ・オオタニが止まらない。6月の活躍は凄まじかった。

 野茂、イチロー、松井、上原らこれまでも数々の日本人選手がメジャーのスタンドを沸かせてきたが、今季の大谷の衝撃度はさらに上をいく。5日時点で打率こそ2割7分8厘だが、本塁打が両リーグ単独トップの31。打点はリーグ3位の67点。

 ベースボールが国の文化、チームはわがまちの魂として根づくアメリカにあって、日本人としては同胞の活躍がうれしいだけでなく、結果が出ない選手に手厳しい地元ファンの驚きと熱狂が痛快である。

 また、大谷は笑顔とスタイルのよさも魅力。かつての日本人選手にはないかわいい顔、ムキムキの上半身に長い手足はそれだけで絵になり、本塁打を放ってダイヤモンドを一周する姿には、テレビの前のオッサンもつい「かっこええな…」と見とれてしまう。

 投手としては現在、12試合で3勝1敗、防御率3・60と平凡だが、オールスターには野手と投手の両方で選出された。ベーブ・ルース以来の二刀流はすでにベーブ・ルースを超えたとの声もある。アニメのような活躍、さらに真面目で誰からも愛されるキャラとくれば、敵の選手もファンも脱帽しかあるまい。

 オリックスからマリナーズへ移籍したイチローが、いまの大谷と同じように全米を沸かせたころ、そのすごさを「いつか子どもに聞かせたい」と思った。この大谷のすごさもいつになるか、野球が大好きなおじいちゃんとして、孫に聞かせてやりたい。ショウヘイがささやかな夢をくれた。(静)