洋ナシのようなフルーティーな甘い香りが特長の梅の品種「翠香(すいこう)」を使った加工品を、みなべ町東岩代の有本農園(有本陽平代表)が初めて開発した。商品化したのは梅シロップ「翠香」で、今月10日からインターネット等での販売を開始。有本代表(35)が独特の香りに魅せられ、多くの人に知ってもらいたいと思い立ち、数年かけて完成させた。

 家業の梅栽培の後継者になろうと、高校を卒業して茨城県の果樹研究所で2年間、果樹全般の栽培管理などを勉強。育苗中の梅の新品種「翠香」と初めて出会った。帰郷してから就農し、1年のうち半分は東本庄の県うめ研究所で研修を続け、4年半にわたって梅栽培を探求。この間、うめ研究所では翠香の品種登録へ向けて栽培方法の研究をしていた。有本さんはうめ研究所で試験的に作っていた翠香の梅ジュースを飲んで芳醇な香りに惚れ込み、「いつか広めたい」と思い立った。

 2011年、「翠香」が新たに品種登録されてすぐ、有本さんも自身の園地にいち早く植栽。13年には梅酒製造の免許を取得し、翠香を使った梅酒作りへの取り組みを始めたが、梅酒では良さを引き出すのが難しく、今度は梅シロップに挑戦。翠香の実の熟し方は南高とは違い、どのタイミングで収穫すると最も良さを引き出せるか、収穫後の追熟方法など、県工業技術センターやうめ研究所と一緒に研究を重ね、シロップは翠香とグラニュー糖だけで丁寧に仕上げた。

 150㍉㍑入りを1200円で発売。有本農園のサイトのほか、国民宿舎紀州路みなべ、東京の日本百貨店で販売。飲み比べてもらおうと、最高級ブランドの南高梅を使った「南高」、紅色が鮮やかな露茜と南高のブレンド「あかねいろ」の商品も創作している。

 翠香はみなべ町や田辺市でも栽培されているが、まだまだごくわずか。有本代表は「梅の酸っぱさもありながら洋ナシのような甘い香りがあり、他ではこの味、香りを出せない。ぜひ飲んでほしい」と胸を張り、「翠香はまだ有名ではないですが、これを機に注目されるようになってほしい。新しい加工品づくりにもチャレンジしていきたい」と話している。