全国的にコロナの感染者が減少傾向にあり、ワクチンの接種が加速している。自治体や自衛隊による大規模接種センターに加え、企業や大学も接種センターとなり、社員や教職員とその家族、学生、地域住民まで対象にするという。

 政治とカネが影響し、4月の広島と長野の参院選で野党に敗れた自民党にとって、ワクチン接種の加速は秋の衆院選勝利への絶対条件なのであろう。菅首相の号令一下、二階幹事長、河野担当大臣、各派閥の領袖が全力を挙げている。

 野党も選挙をにらみ、「接種の遅れは政府の失策だ」と息巻く。しかし、昨年末のワクチンを特例承認する法改正の国会審議で、承認を急ぐ政府与党に反対、慎重な対応を求めていたのはあなたがたではなかったか。

 自治体も企業も大学も引きずられるように軌を一にしているが、全体の流れとしてようやくの感は否めない。オリンピックという国家の大事業を控えながら、あらためて政治家は選挙でしか動かないと感じる。

 今月4日、県内の新規感染者が83日ぶりにゼロになった。このまま減り続け、終息してくれればと期待が高まるが、新種のウイルス、巨大地震や豪雨の自然災害、さらにメガバンクの経営破綻、外国からの攻撃など国民の不安は消えない。

 国際政治学者の田中明彦氏はコロナ禍のこの1年半を振り返り、日本は非常事態に対応するための国家としての体制不備と能力欠如があったとし、非常時に必要となる「平時には必要のない人たち」の確保と動員、その仕組みづくりが急務だと指摘する。

 社員の副業を認める企業が増え、個人間の物や技術の共有、売買が広がっている。生活に不安が重くのしかかるなか、世の中が変わりつつある。(静)