写真=発行された「うんちの行方」

 印南町古井出身で元文藝春秋副社長の西川清史さん(69)=東京都三鷹市在住=と友人との共著で出版された「うんちの行方」(新潮新書)が好調な売れ行きとなっている。トイレで流した大便はどう処理されるのか、マンション全戸で一斉にトイレを流すとどうなるのかなど、ふと思ってもなかなかまじめに聞けない素朴な疑問について、“文春砲”でおなじみ週刊文春の記者経験もある西川さんが、関係者への取材で鋭く切り込み、山盛りのうんち情報を詰め込んだ一冊となっている。

 西川さんは旧切目川中学校、日高高校、上智大学外国語学部仏語学科卒業後、1977年に文藝春秋入社。週刊文春では12年間記者として活躍し、いくつかのスクープも取り上げた。ライフスタイル誌「CREA」、情報誌「TITLe」の編集長も務め、2018年に副社長で退職した。「うんちの行方」の共著は著述家の神舘和典さん(三鷹市)で、西川さんとは20年来の友人。2人は三鷹のおしゃれなカフェで「トイレで流したうんちはその後どうなっていくのだろう」という話になり、昔の肥溜めや“ぼっとん便所”などの話題で閉店まで盛り上がったことが今回の本のきっかけとなった。

 取材では実際に下水の臭いをかいだり、汚水処理場に潜りこんだりし、トイレメーカーにも質問攻め。昔の鉄道の便の処理方法はJRに聞いても当時を詳しく知る人が見つからず、西川さんが自身の人脈を生かして旧国鉄時代の人を探し出して話を聞いた。

 こうして執筆された内容は、かつてのトイレ事情を知る世代には懐かしく、水洗トイレしか知らない世代にとっては衝撃の事実も。弥生時代から令和まで、トイレ事情がどのように変化し、どんな影響を与えたのかも紹介しており、環境問題を考えさせられる一冊にもなっている。

 初版は1万2000部を発行し、重版を発注。西川さんは「マンションのトイレを一斉に流すとどうなるのかなど、本を発行する大義名分があるから取材できるが、普通はまじめに聞けない。私自身、長らく疑問に思っていたことがはっきりと分かり、すっきりした。子どもたちにも昔のトイレ事情を知る機会になれば」と話している。