県内で16日、男女3人に新型コロナウイルスの変異株の感染が初確認された。従来株の発表では感染者の住んでいる保健所管内や年齢、職業、一定の感染経路などは公表されているが、今回の変異株の感染では性別と人数のみの公表。感染していない人からすれば、できれば感染者と関連があるような場所には行きたくないのが本音で、せめてどこの保健所管内かということぐらいは教えてほしいと考えるかもしれない。

 しかし、県内でもコロナの感染者に対する誹謗中傷が起きている。少し古いデータだが、昨年2月末から今年1月末まで、インターネット上での書き込み、発言や落書き、手紙などの誹謗中傷に関する県への相談件数は38件。これはあくまで相談があった件数で、氷山の一角と言える。

 変異株は感染力が強く、致死率が高いという研究結果もある。そんな変異株の感染者が特定されるようなことがあれば、さらに誹謗中傷の的になるかもしれない。そもそも、従来株の感染者も特定されないような公表の仕方をしているが、それでも近所の人の話であったり、店が急に何日も休んでいたりすれば、その地域ではだいたい感染者の見当がつくこともある。今回の変異株は昨年12月までさかのぼって感染者のウイルスを調べているが、例えばどの時期に感染が判明した陽性者なのかという情報を出すと、それだけでも感染者が特定される恐れがある。そういった意味で、県の変異株に対する個人情報の発表方法は妥当と言える。

 いずれにしても、変異株であっても、マスク着用や密を避けるなど、感染対策は全く同じ。冷静に正しく恐れながら、感染予防を徹底しよう。(吉)