先日、NHKで、長期ひきこもり状態から抜け出し、仕事を得て社会復帰を目指す和歌山県内の若者や中高年が、コロナ禍の厳しい雇用環境の中でもがいている実態が紹介された。NPO法人ヴィダ・リブレの活動が中心だった。

 日経平均株価が30年半ぶりに3万円の大台を回復したが、実際は景気の上昇を実感できない人が多い。外国人が日本の治安のよさや国民性、食文化、環境衛生などを称賛しても、当の日本人はそれに気づいていないという話にも通じる。

 外国人がうらやむそんなすばらしいニッポンに、なぜ若者のひきこもりが多いのか。精神科医でもあるヴィダ・リブレの宮西照夫理事長は、その要因として過度の競争社会、日本の文化が持つひきこもりに対する許容性の高さを指摘する。

 「学歴が社会的成功と幸福をもたらす」という価値観の中で育った若者がつまずき、不登校となったとき、日本人はその状態を「もの思いに耽る」「大人しい」などとある種の美徳として、異常とはみなさない傾向があるという。

 また、いくつになってもわが子を保護する母親の過剰な愛情、ひきこもる子どもを「恥」ととらえる家族、「怠け者」とみなす周囲、間接的に人とつながるSNS等のコミュニケーションツールがひきこもりを長期化させる。

 世界3位の経済大国であり、海外の人から大好きといわれる日本は、はたして本当に住みよい社会なのか。ひきこもりだけでなく、いじめやSNSのバッシング、コロナ差別をみても、日本が抱える社会問題は少なくない。

 勝ち負けが劣等感を生み、周りと違うことが異常と感じる世の中。大切なのは人に勝つことではなく、自分を高めるために努力することであるはずだが…。(静)