和歌山高専生物応用化学科の楠部真崇准教授(43)が26日、漁場回復に向けた藻場の復活へ、日高町の方杭漁港でアマモの定植実験を行った。環境にやさしいバイオセメントを使った定植実験。今年で3回目で、昨年は魚の食害により定植に至らなかったため、今回は種子の数を約100倍に増やして挑戦。成功すればエコで低コストな藻場再生法として期待されている。

 藻場は海草や海藻などの群落。エビや小魚のすみかとなっているが、近年の海水温の変化などで減少しており、それに伴いエビなどを餌とする魚の漁獲高も減り、漁業への影響が懸念されている。

 藻場復活の取り組みは各地で行われているが、ダイバーの人件費や海洋ゴミの影響で広く普及していなかった。そんな中、楠部准教授は微生物の力で砂を固めるバイオセメントに着目。海の砂と海中にいる微生物を使ってセメントを作り、アマモの種子が入った直径2㌢程度の球体「アマモボール」を作製。海中にまくことで、海底でアマモが育ち、バイオセメントは少しずつ分解され、最終的に砂に戻る。ダイバーの力を借りなくても、陸上や船の上から簡単にまくことができる。

 実験はおととしに第1回を行い、夏に種子をまいたが秋の台風で流失。昨年12月に2回目を行い、夏ごろまでには10㌢程度まで成長していたが、9~10月ごろにアイゴの食害に遭い、周辺に合った天然の海草とともに枯れてしまった。

 今回は食害でも全滅しないよう種子を前回の約100倍となる2万粒用意。さらに事前に海底を耕し定植しやすい環境を整備。当日は生物応用化学科の学生4人も協力し、カヌーに乗ったり潜水して、アマモボールを湾内の3カ所にまいた。順調に育てば、来年2月ごろに芽が出て、5,6月ごろに種子をつける。

 楠部准教授は「今回は数を増やすとともに、生殖しやすい環境に整えてきた」と効果に期待しており、「ここでの実験が成功すれば実験エリアを増やしていきたい」と話している。

写真=アマモボールをまく学生