9月に放映が終了、今なおテレビで話題としてことあるごとに取り上げられる超人気ドラマ、「日曜劇場 半沢直樹」(TBS系)。原作のシリーズ最新となる第5作をご紹介します。若き日の半沢が大阪を舞台に活躍します。

 物語 時は21世紀になって間もない頃。のちの敏腕バンカー、若き半沢直樹はとある事情で東京中央銀行本部から大阪西支店へ異動となっていた。毎朝、屋上にある稲荷社に支店員全員で参拝するならわしがあり、支店長は定期的に地元有力商店主らと「稲荷祭り実行委員会」に出席しなければならない。半沢はそんな地元密着の空気も、ざっくばらんな愛すべき顧客たちも気に入っていた。しかし赴任したばかりの浅野支店長はエリート意識が強く、庶民的な大阪の水になじめないようで、稲荷祭り実行委員会も半沢に押しつけっぱなし。

 そんな中、大阪営業本部から、支店の取引先である老舗の美術系出版社「仙波工藝社」の買収案件がもたらされる。出版不況で資金繰りに困っているだろうから、一も二もなく話にのるだろうという、取引先を軽視するような大阪本部の読みに、半沢は強い反発を感じる。誇りを持って良心的な美術雑誌を出し続けている若き経営者、仙波は当然の如くその話をはっきりと拒否するのだが、大阪営業部の伴野は執拗に脅迫じみた説得を繰り返す。その裏には、謎の死を遂げた天才画家の存在があるらしい…。

 何の気なしにアマゾンのレビューではどんな評価が多いのかな?と見てみると、その件数の多さにびっくり。10日現在で1673件、シリーズ中最多。評価は、星5つと4つで9割超えでした。

 私の評価も大方の通り、率直に言って「面白かった!」でした。池井戸さん、ノッてるね~という感じで、筆が冴えてます。いい意味でのシリーズの王道パターンを踏襲しながら、今回異色なのは美術をテーマにストーリーが展開すること。帯にはミステリーの要素を示唆するようなことが書かれており、確かに池井戸さんはそもそも江戸川乱歩賞を受賞してデビューしたという経歴の持ち主ですが、不可解なトリックを解き明かすとかそういう本格ミステリーではありません。むしろ、より深みのある人間模様の謎を解き明かすという感じで、謎の部分も読みごたえ十分。その謎の解明が物語のメインテーマと結びつき、さらに大阪という舞台の持ち味をも十分に生かしながら、各所に張り巡らされた伏線が劇的に回収されていくクライマックスはいつもながらのこのシリーズの醍醐味。ブレない正義のバンカー・半沢の面目躍如。

 ドラマ化するなら、2時間ずつ前後編のスペシャル枠はどうだろうとか勝手に考えてしまいました。  (里)