新内閣が発足し、もうすぐ1カ月。菅義偉首相は、自身が官房長官として支えた安倍内閣の政策を踏襲するとし、主要閣僚も再任したが、一方で、全省庁の行政手続きを対象に押印の廃止や、日本学術会議が推薦した会員候補者6人を任命拒否するなど、独自のカラーを打ち出している。国民の生活に直結することで言えば、携帯電話料金の引き下げの話題。すでに3大キャリアが料金を引き下げる方針を示してるが、どうなることやら。

 2018年に官房長官だった菅総理が、「携帯電話料金は4割下げる余地がある」と発言し、端末販売時の値引額規制、解約手数料引き下げ、長期契約者への優遇規制などを打ち出し、格安スマホ等に乗り換えやすい環境を整備。当時も大手キャリアが新料金プランを発表するなどしたが、端末価格の上昇もあり、総務省のアンケートで「安くなっていると実感していない」という人が7割もいたという。また、実際に大容量プランは海外と比べて割高になっている。

 利用者にとっては携帯料金のさらなる値下げは嬉しいことだが、高速通信や安定性の向上が可能になる5G化を進め、多額の設備投資をしている通信会社にとっては耳の痛い話だろう。しかも、アメリカの巨大企業が宇宙ビジネスに参入し、中でもアマゾンは3000基以上の通信衛星を打ち上げる計画。これが成功すると、地上の携帯電話基地局が不要となり、北極地方、南極大陸を除くほぼ全てのエリアで5G通信が可能に。

 料金を引き下げたり、国内事業者同士で利用者の奪い合いをしたりしている間に、世界の携帯電話事情が一変し、国内企業が飲み込まれてしまうことも。そうなる前に、国の支援が必要なのは通信事業者かもしれない。(陽)