地域のスポーツ振興に顕著な功績を挙げた人をたたえる文部科学省のスポーツ推進委員功労者が決まり、田辺市スポーツ推進委員協議会長の冨田進さん(72)=田辺市龍神村=が文部科学大臣賞に選ばれた。冨田さんは教師になった1970年から中学校への陸上部創設、村民マラソン大会の開催、地域総合型スポーツクラブ設立など手掛け、子どもからお年寄りまでスポーツを通じた健全育成や健康づくりに貢献している。

 生まれは旧南部町。22歳で教師となり、60歳で退職するまで38年のうち34年間を龍神村の中学校で勤め、住民からは「冨田先生を知らない人はいない」といわれるほど親しまれている。

 日本体育大学を卒業後、初めて赴任した龍神中学校で陸上部を創設。教師生活中は各校で陸上部の顧問を務め、熱心な指導で多くの生徒を近畿大会等に導いた。教え子からは全国大会優勝者や箱根駅伝ランナーが輩出、74年からの龍神中大熊分校主任時代は、50㌔競歩で3度オリンピックに出場した小坂忠広さんも指導した。

 部活にとどまることなく、72年に村民マラソン大会や龍神村駅伝大会、87年には龍神温泉木の郷マラソン大会、91年には関西実業団駅伝の開催に力を注ぎ、それぞれの大会は今でも続いている。03年には地域総合型龍神スポーツクラブを発足。現在も毎週2~3回、陸上教室を開いているほか、グラウンドゴルフ大会、ビーチボールバレー大会、壮年野球大会、歩こう会を主催しており、子どもから高齢者まで誰でも気軽にスポーツを楽しめる環境づくりを展開している。

 スポーツだけでなく、地域協議会「みらい龍神」を立ち上げ、サトイモ焼酎の販売、田んぼアートなど地域活動のリーダーとしても活躍。冨田さんは「スポーツ推進委員としてというよりも、これまでの活動に対しての表彰だと受け止めています。私自身、学生時代にいい先生に巡り合い、教師時代もいい仲間に恵まれ、行政の協力も大きかった」と感謝。「初めて担任した教え子の子どもに校長として卒業証書を渡すことができたのは、龍神村で長く勤めさせていただいたから。ここでできた人とのつながりは今でも続いており、皆さんのおかげでここまで来ることができました。これからも体の続く限りスポーツの振興に取り組んでいきたいと思います」と話した。

写真=これまでの取り組みを笑顔で話す冨田さん