自民党の菅義偉総裁(71)は16日午後、国会で指名を受け、第99代の首相に就任し、同日中に組閣を終えて菅内閣が発足した。首相は「国民のために働く内閣」を掲げ、新型コロナウイルス対策と経済再生に加え、行政の縦割り打破や規制改革に意欲。日高郡市民からも経済対策や観光振興、コロナ特効薬の開発など、新政権に期待する声が上がった。

 みなべ町埴田、「海鮮房井之芳」の代表取締役で南部飲食組合長の井上武志さん(60)は、「コロナの影響は大きく、依然として経営は厳しい」と不安を募らせる。「国民が苦しい思いをしている時だからこそ、国会議員も給料を減らすくらいのことが必要。金額の問題ではなく、痛みを分かち合おうとする気持ちの問題」と国民に寄り添った姿勢を求め、「即効性のある対策は難しいと思う。せめて公共料金を安くするなど一般住民の生活を考えた施策をお願いしたい」。

 御坊市藤田町吉田の堀江明美さん(54)は、「テレビで菅さんが話すのを聞いて、言葉に実のある印象を受けました。前政権に『忖度』して政治を進める空気があったとすれば、それは受け継がずに改めて、いい国にしてほしいですね。新内閣に望むのは地域の活性化。若い人が地域おこしを進める中心になるよう、子育て世代の人たちが安心して暮らせる地域であってほしいと思っています。少子化が進んでいますが、働く場所の確保など環境さえ整えば結婚したいという人は多いのではないでしょうか。菅さんは秋田出身ということで、地方の隅々まで目の行き届いた政治をしてもらえるのではと期待しています」と話している。

 美浜町和田の井本秀幸さん(68)は新内閣の顔ぶれについて、「安倍内閣の継承で再任も多く、サプライズもなく、女性の起用も少ない。失言ですぐやめたりしそうな人もない無難な印象」と感想。今後は「コロナ対策・経済再生を最優先に掲げているので、両立は難しいと思うが期待したい。重症化リスクの高い高齢者は、少し外出するのも恐ろしくて気を使う。PCR検査体制の整備などに力を入れ、無症状の人でも自覚できるようにしてもらいたい」という。

 みなべ町西岩代で梅などを栽培している農業中早大輔さん(39)は、「地方の細部まで目が行き届くような政策を期待しています。特にいま問題となっている新型コロナについては早急に対応してもらいたい。また、来年に延期になったオリンピックも開催し、経済効果につながるようにしてほしい。農業に関しての菅さんのイメージはあまりありませんが、新しく農林水産大臣に就任された野上浩太郎さんがどういう考えを持たれているのか興味があります」と話した。

 日高町小中の大学1年生小畑皓希さん(19)は菅首相について、「物静かながら実行力が期待できそう」という印象。今後の政権運営は「安倍政権のいい部分を継承し、派閥のしがらみはあっても、実行すべき点はしっかり実行しながら、(令和おじさんとして)令和の新時代にふさわしい新しい政治の形をつくってほしい。コロナや自然災害でも、国民が信頼の持てる対応をしてもらいたいと思います」。

 日高医師会会長を務める御坊市湯川町小松原、中島医院の中島彰一院長(65)は、「一番に望むのは、新型コロナ対策として根本となる治療薬とワクチンの開発に力を入れること。これが開発されればコロナは何の問題もなくなります」とし、「この冬はコロナとインフルエンザの同時流行を見据えた対策も必要。両方が迅速に検査できるような体制の抜本的拡充も進めてほしいですね」。保健所のマンパワー確保や患者数の減少で厳しい経営が迫られている医療機関への支援(診療単価アップ等)にも期待。「菅首相は実務型だとお見受けしますので、コロナ対策をスムーズに展開していただけると思います」。