海で漂流する人らを助けたとして、日高広域消防本部は14日、人命救助功労の表彰を行い、みなべ町埴田の渡船業大川恵三さん(55)に感謝状を贈った。大川さんは、助けを求める連絡を聞くや現場に急行し、海に浮かんでいる男性(19)を発見。すぐに漁船へ引き揚げるとともに、離島に泳ぎ着いていた他の3人も救助し、「無事に助かってよかった」と笑顔を見せた。

 同消防によると、今年8月15日午後1時ごろ、みなべ町埴田、国民宿舎紀州路みなべ西側の海岸から西の沖にある鹿島へ、男性4人がゴムボートに乗って渡ろうとしたが、途中横風で流され始めたため、4人はボートを捨てて海へ飛び込んだところ、そのうち大阪市の19歳の男性が泳ぎが不得意だったため、力尽き海上で仰向けに漂流。ちょうど埴田漁港から見回りに出ようとしていた大川さんに、騒ぎを知った人から「溺れている人がいる。助けてあげて」との電話があり、鹿島から堺の方へ向かうと、海面に顔だけが出た状態の男性を見つけた。
「上がれるか」と尋ねたが無理なようだったため、男性が着ていた服の襟首をつかんで船に引き揚げ、鹿島近くの離島に泳ぎ着いた他の3人も埴田漁港に連れ帰った。19歳の男性がのどの渇きを訴え、病院に運ばれたが、全員無事。大川さんの迅速で的確な行動が功を奏した。

 この日、同消防南部出張所で小西威寿消防長が感謝状を贈呈。「大川さんの迅速な救助活動で尊い人命を救うことができました。命の危機にひんした19歳の男性を発見、機転の利いた行動で救助していただき、まさに時間との闘いのなか、発見や救助が遅れていれば命にかかわっていたと思います。さらに離島に泳ぎ着き、不安な思いをしていた他の友人3人も同時に救助。人命救助に尽くす私たちにとっても大きな喜びです。今後も救急救命へのご協力をお願いします」と感謝した。

 渡船業を始めて30年以上になる大川さん。「浮かんでいた人は息子と同じぐらいの年で、本当によかったと思います」と語った。

写真=小西消防長から感謝状を受ける大川さん