御坊日高でロケを行った映画「ソワレ」が全国公開から1週間を迎える。各劇場で販売されている映画パンフレット(定価750円)に、総合プロデューサーの豊原功補さんの「プロダクション・ノート」、外山文治監督の「監督活動日誌」が掲載。現地での撮影の様子などが詳細に記されている。

 「ソワレ」は俳優・演出家の豊原さん、女優の小泉今日子さんが立ち上げた新世界合同会社のプロデュース作品第1作として話題。村上虹郎さん、芋生悠(いもう・はるか)さんのW主演で、罪と心の傷を抱えた2人の逃避行を切なく描いている。外山監督は短編作品がモナコ国際映画祭で5冠などの実績。「プロダクション・ノート」では2018年4月に和歌山市出身の映画プロデューサー前田和紀さんから外山監督に「和歌山県の御坊日高を舞台に映画を」と話を持ちかけたところから始まり、現地の見学、キャスティングと出演交渉、主演女優のオーディション、「新世界合同会社」の立ち上げ、和歌山県内各関係機関へのあいさつ回りなどが書かれる。現地入りした小泉さんが「和歌山の美味しい食材をたくさんいただき至福でした」と話したこと、ストーリーでも重要なモチーフとなる道成寺での成功祈願では「大宝元年(701年)に建立された道成寺でご祈祷を受け神妙な気分になる」などつづる。

 「監督活動日誌」はサポータープロジェクト参加者へのメールマガジンを加筆修正したもので、日記形式で撮影の模様を克明に記録。夜明けの光の中の煙樹ケ浜の撮影では「朝になってしまってはもう遅く、1日が始まる瞬間に訪れる僅かな光を狙う」「本当に凄い空と海の色だった」と感動をつづっている。紀州鉄道西御坊駅の撮影では「今まさに映画のためだけに電車が走り出す。夢のようだった」。多くの見学者が訪れた民家の撮影では「本番になるたびに地元の皆様が一緒になって息をひそめてくださり、皆で撮影を乗り切っているような気持になった」、高齢者施設での撮影では「現場で高齢者演技体験を実施し、参加者全員で芝居を楽しんでもらった。どこまでが演技でどこまでが現実なのかその境が分からない映像の説得力が本作の魅力」。道成寺の撮影では「今日のロケ地は成功祈願をした道成寺。皆で汗をかいて長い石段を登っていく」などつづり、日高高校のロケでは「たくさんの皆様が見学に来てくださり、撮影を見届けてくださいました」と感謝。

 映画評論家の伊藤彰彦さんの評も掲載され、「二人が駆け抜ける和歌山の風景が素晴らしい」「昭和の寂れと自然の豊かさが共存する『御坊日高』地区には、逃げる二人が身を潜め、雨露をしのぐのにうってつけの廃校、空き家、農家が点在し、あたかも追われる二人を土地の精霊がかくまうかのようだ」。安珍清姫伝説について「この伝承は悲恋だが、外山文治は『二人が出会ったことの至福』を強調し、二人の逃避行に重ね合わせる」と解説している。

 ジストシネマ御坊での動員数は、2日目の8月29日は87人(昼43人、夜44人)、30日は83人、31日は58人、9月1日は85人(昼67人、夜18人)、2日は118人(昼67人、夜51人)と好調。パンフレットも好評で、一度完売して再び入荷しているという。

写真=日高高校などロケ地の写真も掲載