名実ともに当代随一の人気作家、東野圭吾の作家生活35周年を記念する「公式ガイド」が出ました。

 扉のページには、全96作品の著作を「35」の形に並べた粋な写真。それから著者の年表。デビュー前の1983年、江戸川乱歩賞への応募から始まり、昨年の第1回野間出版文化賞受賞、今年の「クスノキの番人」出版まで軌跡が端的にまとめられています。次に、96冊の自著解説。それから「加賀恭一郎」「ガリレオ」「マスカレードホテル」とシリーズ物の紹介と分析。そして貴重なロングインタビュー2本。趣味の域を超えるスノーボードへの情熱や、創作の裏側が語られます。最後に「読者1万人が選んだ! 東野作品人気ランキング」の結果発表…という内容。

 私は東野作品に関しては、「デビュー作からずっと読み続け、途中で見限って離れ、しばらく経ってまた戻ってきて、空白期間を埋めるべく新作と並行して旧作を読んでいる」というスタンス。前作の「25周年記念公式ガイド」を通して読むとなぜ自分が一時離れたのかよく分かり、有意義でした。

 本書でここ10年の歩みを読むと、還暦を超えてなお研ぎ澄まされたアイデアと精力的な執筆姿勢をキープする著者の凄さが分かります。この人はただの流行作家じゃありません。確固たる自分の表現したいものが芯にあり、その上で最大限に読み手のことを考えて表現できる。アーティストと職人の両方の資質をバランスよく併せ持った、そういう意味では最強の作家だと思います。

 最大の不満は「1万人が選んだ」ランキングが前回の内容と同じであること。これはぜひ、96作品を対象として新たにアンケートを取り直してほしいですね。「ナミヤ雑貨店の奇蹟」や「夢幻花」がきっと上位に食い込んでくるはずです。