近年、収穫時期の労働力確保が課題となっている梅産地のみなべ町で、京都出身の山下丈太さん(38)が今年5月から清川に移住し、梅農家に援農者を紹介する会社「アグリナジカン」を立ち上げている。すでに今季は4軒に7人を派遣。地域の人手不足解消につながるだけでなく、援農者の支援、援農や農業に興味のある人の受け皿として、サポートしていく考えだ。

 山下さんは高級煎茶の産地として有名な京都府和束(わづか)町で育った。サラリーマンを6年経験したのち、和束に戻り、観光による地域活性化に取り組む仕事に2年半携わった。和束には約300軒の茶葉栽培農家がおり、生産者と交流する中で、観光よりも茶葉収穫時期の人手不足という課題があることが分かり、2014年、援農者を紹介するプロジェクト「ワヅカナジカン」を立ち上げた。ホームページなどで全国各地から援農者を募り、収穫期の5月から7月の3カ月間、シェアハウスで共同生活し、農家と一緒に働いて田舎暮らしをする取り組み。今年7年目を迎えている。自治体関係者ともつながりができ、奈良県の柿産地でも同様のプロジェクトを展開したほか、山口県阿武町でも援農者と農家のマッチングを行っている。

 みなべ町は数年前、たまたま遊びに立ち寄り、好きになった。その後、大阪で行った援農のイベントに参加していたみなべ町の青年農業者と交流が生まれ、講演依頼を受けてみなべ町で講師を務めたことなどが縁となり、人手不足が課題となっているみなべ町で起業することにした。今年3月には有料職業紹介業の免許も取得。清川の空き家を紹介してもらい、5月には妻と双子の子どもと一緒に移住し、拠点にしている。南高梅の収穫シーズンには清川や岩代の農家4軒に全国から募った援農者7人を紹介。現在も残っている4人のうち1人と一緒に住んでいる。

 県の「わかやま地域課題解決型起業支援補助金」にも採択が決まり、今年中にいま住んでいる民家や離れに浴室やシャワー、トイレを設置する改装に活用し、援農者が生活しやすいよう整備する。

 山下さんは「単に仕事を紹介して終わりではなく、援農者と一緒に生活して働く人を応援したい。全国には仕事や人生にちょっと疲れた人、農業や援農に興味を持っている人、次の就職までの期間を過ごしている人、自然に囲まれて過ごしたい人、さまざまいると思います。そんな人たちと農家の間に立って生産者も援農者も支援したい。農業をやってみたいがどうしたらいいか分からない人の受け皿としても背中を押してあげたい。その中から移住する人がいれば地域活性化にもつながると思っています」と話している。

写真=拠点の清川の民家の前で双子の子どもと笑顔の山下さん