日高町萩原のJR紀伊内原駅で、捜索中の未帰宅男児を見つけたとして、湯浅署は12日、JR西日本の電気設備管理等を手がける和歌山市中之島、西日本電気システム株式会社和歌山支店(森泰夫支店長)に感謝状を贈った。作業員たちは寒い深夜の時間帯、駅舎にいた男の子に声をかけ、通報。寒さや事件・事故の危険から子どもを守り、無事の帰宅につなげた。

 調べによると、5月21日午後5時ごろ、同署管内(湯浅町、広川町、有田川町)に住む小学5年の男の子が「塾に行く」と家を出たまま帰宅せず、同9時ごろ、保護者が警察に相談。管内のスーパーで男の子の自転車が見つかり、5時20分ごろに歩いてスーパーを離れる姿が防犯カメラに映っていた。

 その後、事件・事故の可能性も視野に、署員ら約20人体制で付近や山、川の捜索を続ける中、翌22日午前0時30分ごろ、きのくに線の電気設備修繕工事のため、同社の作業員8人が紀伊内原駅に集合したところ、駅舎内のベンチに1人で座っている男の子を発見。「何してるの?」と声をかけた。男の子は「始発を待っている」と答え、さらに話を聞いていくと、おかしな点があったため、不審に思って110番通報。警察官が駆けつけ、捜索中の男の子と判明、無事に保護し、家族に引き渡された。

 湯浅署の署長室で行われた贈呈式には、同社工事指揮者の田中秀和さん(30)ら7人が出席。代表で田中さんが岡田謙吾署長から感謝状を受け取った。岡田署長は「健康面もさることながら、事故や事件に巻き込まれるかもしれないという、危険にさらされていた一人の子どもの命を守った立派な行為。なかなかできないことで胸を張ってください。本当にありがとうございました」とたたえ、田中さんは「事件・事故に巻き込まれることなく親御さんのもとへ無事に帰れてよかった。これからも困っている人がいたら、積極的に声をかけるようにしたいと思います」と話していた。

 日高広域消防によると、発見当時の気温は13・5度。男の子が着ていたのは長袖のTシャツ1枚で、少し震えていたようだったという。男の子は自ら電車に乗って紀伊内原駅へ行っており、事件性はなく、家出しようとしたのではないかとみられている。

写真=岡田署長から感謝状を受け取る田中さん