やはりというべきか、東京オリンピック・パラリンピックは近代五輪史上初の延期で首相とIОCが合意した。出場アスリートのみならず、関係者、聖火ランナー、テレビ観戦を含め観戦を楽しみにしていた国民皆にとって大変残念な展開だが、これはもう仕方のないことだろう。すでに、日本の努力でどうにかできる状況にはないのだから◆主役である各国アスリート達のコンディションを万全に保つことが望めないのはもちろん延期の大きな理由だが、問題はそれ以前のことのように思う。報道される各国の感染者数・死者数が日毎に増えていく、そのスピードは恐ろしいほどだった。今まさにその脅威が人々の生活にも心にもダメージを与えている以上、気持ちを平和とスポーツの祭典に向けるようにと躍起になって鼓舞しても、到底無理な相談だ。特にイタリアの死者数の急激な増加は背筋が寒くなるほどで、それが報道された時点でオリンピックをこの夏に開くことはできないのではないかと思った。大きな事を行うにはそれにふさわしい潮目を読み、それに乗って成功へと導くべきだが、今はそんな流れがない。いつ、正常な潮流が世界に帰ってきてくれるかもわからない◆五輪のマークが表すのは五大陸。開催地が細心の注意を払って安全を保持できても、訪れてくれるべき各国に平和がなければ、やはり平和の祭典は実現しない。目に見えない微細なウイルスをコントロールできないのは悔しいことだが、天災と同じく傷を広げないようじっと耐えて、通り過ぎるのを待つ以外にない◆すべての災難は、次に生かすべき教訓をそこから汲み取ることができる。悔しい思いをしたことを1年後への糧とできるよう、心を練っておくことができればいいと思う。(里)


