2019年の1年間に御坊署管内で運転免許証を自主返納された件数は、前年比34件増の304件で過去最多だった。ほとんどが65歳以上の高齢者で、相次ぐ高齢ドライバーによる交通事故への関心の高まりや啓発による返納制度の周知で、自主的に返納する人が増えたとみられている。

 昨年は東京・池袋で当時84歳の男性が運転する乗用車が母子をはねて死亡させ、通行人ら9人にもけがをさせた。ブレーキとアクセルを踏み間違えた疑いがあるとみられており、高齢者の運転操作ミスによる事故は全国で後を絶たない。

 御坊署管内の返納者は16年167人、17年236人、18年270人、19年304人と右肩上がり。返納の理由については「運転に自信がなくなった」「家族からの勧め」との声が多いという。

 昨年に御坊署管内で発生した人身事故は69件で、傷者82人、死者3人。このうち65歳以上の高齢者が関係する事故は35件で前年比9件減少しているが、全体に占める割合は約50%に上り、県内の約38%と比べても高くなっている。傷者82人のうち25人、死者3人のうち2人が65歳以上。御坊署は相次ぐ高齢ドライバーによる大きな事故の発生も、自主返納を促すきっかけの一つになっているとみている。

 県内全体でも19年の自主返納は4459件で過去最高。16年2566件、17年3122件、18年3204件と毎年増加している。

 一方、警察では高齢者の免許の返納を促すため、希望すれば運転経歴証明書を交付。昨年1年間の証明書交付申請者数は、御坊署管内237人で前年と比べて30人増加した。証明書は身分証明書として使えるほか、御坊署管内では印南町、由良町、日高川町のコミュニティバスで利用料の割引や無料になるという特典がある。

 御坊署交通課の福田知功課長は「運転に不安を感じたり、おぼつかなかったりが多くなってくれば、免許の返納について家族で話し合って検討してみてください。本人にとって勇気がいる決断になると思うので、大切な人の声は大きな後押しになります。ご本人でもご家族でも、警察に相談いただければ、アドバイスができると思います」と呼びかけている。

 免許の自主返納は和歌山市の交通センターや県内各警察署で受け付けている。

 御坊署への問い合わせは0738―23―0110。