カナダの野球殿堂、BC州スポーツ殿堂入りを果たした伝説の日系人野球チーム「バンクーバー朝日」の元選手の子孫で、東京でチームの資料収集等に取り組んでいる嶋洋文さん(72)が23日、美浜町三尾を訪れた。朝日軍には戦前、三尾出身の野田為雄さんが所属し、中心選手として活躍。4年前には嶋さんの調査により、未渡しだったBC州スポーツ殿堂の記念メダルがカナダに住む野田さんの親類に手渡されており、今回、嶋さんは法善寺の野田さんの墓に手を合わせ、来年春の後継チームの和歌山訪問を報告した。

 朝日軍は1914年、日本人街の日系2世を中心に結成され、バントや盗塁を多用する「スモールベースボール」で白人ばかりのターミナルリーグで優勝。相手のすさまじいラフプレーにも黙ってフェアプレーを貫き、さまざまな差別や排斥に苦しんでいた日系人社会の希望の星となったが、日米開戦に伴う日系人の強制収容によりチームは消滅した。

 2003年、カナダ政府は朝日軍の功績をたたえ、同国の野球殿堂入りを決定。2年後にはBC州のスポーツ殿堂入りも果たし、新宮出身の嶋正一さんら元選手に記念のメダルが贈られた。しかし、元選手の多くはすでに他界しており、遺族とも連絡がつかないなど、20人以上のメダルが未渡しとなっていた。

 このとき、嶋正一さんのおいに当たる洋文さんが未渡しメダルの関係者探しに奔走。正一さんと同じ初期朝日軍のメンバーに三尾出身の野田さんがいたことが判明、さらにトロントに野田さんの異母妹がいることを突き止め、16年4月、その女性に兄為雄さんの殿堂メダルが手渡された。

 朝日軍結成から100年目の14年には、バンクーバーの日系人選手15人が集まって後継となる新朝日軍(現在選手は約180人)が結成された。今回、洋文さんは新朝日軍が来日する来年春、桐蔭高校(旧和歌山中学校)野球部との交流を実現させるため、千葉に住むいとこの嶋英洋さん(88)とともに和歌山を訪問。22日には桐蔭高校で学校と高野連の関係者と会い、来年3月の訪問、選手同士の交流が正式決定した。

 23日は午後から三尾を訪れ、カナダミュージアムの三尾たかえさんの案内で野田さんの菩提寺の法善寺を訪問。岡本淨前住職(78)から野田さんと朝日軍、移民などに関する話を聞き、父の墓と並んで建つ野田さんの墓に手を合わせた。

 洋文さんは「この三尾には日本とカナダのファミリーのつながりがペーパーではなく、いろんな面でリアルに実在している」と感慨深げ。英洋さんも「バンクーバー朝日は野球を通じて民族を鼓舞し、人種間の壁を破り、移民国家の発展に寄与した功績ははかり知れない」と述べ、ともに「来年の新朝日軍の和歌山訪問の際には、ぜひこのアメリカ村にも選手たちに足を運んでもらいたい」と話していた。

 バンクーバー朝日は1921年に来日し、慶応大や同志社大など各地で試合を行い、12勝8敗1分けの成績を残した。同年夏の全国中等学校野球大会で優勝した和歌山中(現桐蔭高)とも対戦し、和歌山中が5―3で勝利。来年はその年から100年目に当たる。

写真=左から野田さんの墓に手を合わせる洋文さん、岡本前住職、英洋さん(美浜町三尾の法善寺で)