美浜町の一般社団法人煙樹の杜(西垣哲雄理事長)と和歌山高専は15日、地域福祉センターで「松林保護のための委託研究発表会」を開いた。松林保護のための研究は、2018年度から、同校の教授らが松くい虫対策、台風や津波による塩害の影響、地方史や松林の管理法の聞き取りなど5つのテーマで研究。それぞれの研究についてこれまでの成果と今後の課題などを集まった地域住民らに発表した。

 松林保護のための研究は、地方創生事業で松林が広がる吉原公園周辺の再整備を進める「ふれあいと健康と起業のまち創生協議会」(煙樹の杜の前身)が2018年に同校に委託。発表者は電気情報工学科の岡部弘祐准教授、生物応用化学科の米光裕教授、生物応用化学科の奥野祥治准教授、環境都市工学科の横田恭平准教授、総合教育科の児玉恵理助教。

 松枯れはマツノザイセンチュウが侵入することで発生。センチュウは松の中で増殖し、水を吸い上げる管を圧迫して松を弱らせ、松枯れを引き起こす。センチュウはマツノマダラカミキリが運ぶとされ、センチュウの温床となった枯死松については焼却処分が行われている。

 岡部准教授は、枯損木管理の省力化をはじめ、素早い計画的な伐採、焼却作業に役立てることを目的に「飛行ドローンと電子タグを組み合わせた松くい虫被害モニタリングシステムの構築~松林俯瞰(ふかん)画像の取得と樹木位置推定手法の確立~」に取り組んだ。ドローン飛行により松林画像を取得、松の木の位置情報などデータベース化。空撮画像から茶色の色相を抽出し、枯死松を検出するというもの。「空撮画像から、位置が特定しやすいよう俯瞰画像の生成までは成功したが、枯死松の検出では、幹や道路などの別の茶色と識別するために精度の向上が課題」と進捗状況を説明した。

 米光教授は「美浜町煙樹ケ浜松林における枯れ松のマツノザイセンチュウ罹患樹の調査」、奥野准教授は「天然由来の松枯病原因病虫の誘因、駆除成分に関する研究」、横田准教授は「煙樹ケ浜における台風襲来時の土壌成分の変化について」、児玉助教は「煙樹ケ浜の地方史の聞き取り調査及び煙樹ケ浜松林の管理についての聞き取り調査」について研究を行い、発表した。

 この日は町内を中心に地域住民32人が訪れ、発表について多くの質問や感想が寄せられた。西垣理事長は「専門的にさまざまな観点からの研究で、新しいことが見えてくることも。地域の大きな宝物である松林を守り、引き継いでいくため、一歩一歩歩んでいきたい」と話していた。

写真=研究結果や今後の課題を発表する教授ら