著者は高校時代から執筆を開始し、大学在学中に江戸川乱歩賞に応募したこともあったそうです。2009年、「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を獲得し、その翌年、48歳で小説家デビュー。代表作には、「さよならドビュッシー」などの「岬洋介シリーズ」、「贖罪の奏鳴曲」にはじまる「御子柴礼司シリーズ」があります。

あらすじ 埼玉県飯能市にあるマンションで、女性の死体が発見された。傍らには、「きょう、かえるをつかまえたよ。はこのなかにいれていろいろあそんだけど、だんだんあきてきた。おもいついた。みのむしのかっこうにしてみよう。くちからはりをつけてたかいたかいところにつるしてみよう」という、子どもが書いたような稚拙な犯行声明文が。これが、近隣住民を恐怖と混乱に陥れる殺人鬼「カエル男」の最初の凶行だった。警察の捜査がなかなか進まない中、次々と事件が発生し、その法則性が明らかになると街中はパニックに…。無秩序に猟奇的な殺人を続ける「カエル男」の目的は? そしてその正体は?

かわいい表紙に惹かれて購入しましたが、表紙からは想像もつかないくらい残虐で過激な内容でした。表紙のようなカエル男は出てこず、ポップな感じも一切ありません。ありがちなミステリーかと思いきや、刑法第39条をテーマに、虐待や暴動などいろいろな要素が盛り込まれ、ラストまで一気に読むことができました。小説はフィクションですが、現実で同じような事件が起こったとしたら、きっとそれ以上のことが発生するんだろうなと思います。悲惨な事件が起こるたび問題に取り上げられる精神鑑定や人権問題に対する、当事者と一般大衆の温度差を細かく描いた、「難しい問題だな」と深く考えさせられる作品です。