1869年5月、戊辰戦争最後の戦場となった箱館五稜郭の防衛線で、新選組副長土方歳三が戦死して今年で150年になります。本作は1962年(昭和37)11月から64年3月にかけて週刊文春で連載され、これまで何度かテレビドラマ化されました。来年はおととしの「関ケ原」と同じく、岡田准一を主演に据えた原田眞人監督の映画も公開されます。

あらすじ 上巻は幕末の動乱期、武州多摩の百姓育ちの土方が武士になりたいという熱い想いを胸に、同じ田舎の芋道場の先輩近藤勇、後輩の沖田総司らとともに京都へと向かう。幕府の後ろ盾を受け、水戸藩浪士の芹沢鴨らと合流して新選組を結成した土方は、組織強化のため「鬼の副長」として統率力を発揮し、京都の町で討幕派勢力制圧に活躍する。下巻からは政権が幕府から朝廷に移り、王政復古の大号令で世の流れは一気に倒幕へ。1867年(慶応3年)12月、近藤が伏見で襲撃されて負傷し、代わりに土方が率いた新選組(幕府軍)は鳥羽・伏見の戦いで敗れる。江戸に戻ってからは沖田の病気が悪化。さらに近藤が官軍に捕まり斬首され、土方は隊を洋式軍化、陸軍と海軍に分けて宇都宮、会津、箱館へと転戦していく…。 

最後の戦の日、土方は死んだ近藤、沖田のもとへ行くことを心に決め、箱館政府の陸軍奉行ではなく、新選組副長として単騎、敵陣に斬り込んでいきます。銃弾に斃れ10年以上たって、恋人のお雪が土方の墓碑が建てられている寺を訪れたとか。最終章「砲煙」は喧嘩師土方の男としての生きざま、武士としての死にざま、時流に逆らう侠気の描写に作者司馬遼太郎の筆が冴えわたり、ラストのたった2行でそれまでの長い物語のすべてが、まるで夢を見ていたかのような感覚に陥ります。