令和――秩序と品格ある美しい調和。そうした意味を持つとされる名の時代が幕を開け、早や半月。テレビ番組なども平常に戻っているが、筆者には令和初の本欄となるので、半月前を振り返ってみたい◆平成最後の日、4月30日夕刻の退位式。陛下はご退出の際に振り返り、しばしの間じっと佇まれた。そして一礼し、静かに退出された。テレビ画面で中継を見ながら、陛下が振り返られ、その場に佇まれた時は「はっ」と胸を衝かれた。穏やかなまなざしは列席の人々や正殿松の間という空間だけでなく、ご在位の30年という時間のすべてに注がれているように思われた。退出のお姿には、遥かな過去と今とを結ぶ、伝統という特別な時間の重みを見る思いがした◆そして令和の始まり。昭和から平成への代替わりとは異なり、天皇陛下の崩御に伴うものではなかったため、晴れ晴れとした祝意に満ちた明るい代替わりとなった。実際にその瞬間を迎えた全国各地の様子など目にすると、一つの時代の夜明けを目の当たりにできた喜びが感じられた◆現在の皇居は江戸城跡であり、お堀が巡らされている。しかし近世以前の天皇の住まい、京都御所にはお堀や石垣など防衛の施設は何もない。1000年以上、そんな必要に迫られることなくずっと過ごしてきた。王朝を武力で倒すという世界史ではよくある事態が、日本の長い歴史では誰にとっても思いもよらないことだったのだ◆実利的な価値とは無縁の世界の存在を重んじ、心からの敬愛を抱く。それができるのは誇るべき日本の国柄であるように思う。民主国家として天皇制のあり方などについての論議はなされるべきと思うが、この国柄は損なわれずにいてほしい。品格ある調和の国であり続けるためにも。(里)


