中米の古代マヤ文明の調査・研究に関する第一人者としても知られる精神科医宮西照夫氏(70)=美浜町和田=が最新刊「一精神科医の異文化圏漂流記―マヤ編―」を上梓した。22歳でメキシコのジャングルに分け入り、文明社会と隔絶したマヤの子孫たちに出会って48年。人生の終末期に入り、「ようやく自分の位置が分かりかけてきた」いま、日本の若者に向けてメッセージを贈る。
宮西氏は日高高校時代は大学で文学を学びたいと考えていたが、両親と担任の勧めであまり関心がなかった医学部(和歌山県立医科大)に進学。入学後も高校時代から好きだった小説を読み耽り、イギリスの作家、D・H・ロレンスが書いたメキシコを舞台にしたマヤ文明の作品に衝撃を受け、マヤへの興味を持つようになった。
22歳でメキシコ南部国境地帯のジャングルに入り、伝統的な生活を送るマヤの末裔、ラカンドン族と約1カ月間、共同生活。西洋文化を吸収し、急速に近代・工業化を推し進める日本とは何もかも異なるラカンドンの人たちに衝撃を受け、「彼らの方が西洋至上主義の日本人よりもずっと幸せなのではないかと思うようになった」という。
その後もマヤ文明の遺跡が残るメキシコ、グアテマラのメソアメリカ地域に通い続け、いわゆる「マヤ滅亡」の謎を解くため、遺跡や高度に発達していた数学、天文学、宇宙・宗教観などの調査・研究に没頭。約10年後には世界的に有名な女呪術師と出会い、宗教儀式に用いられる幻覚キノコの人体への作用、現代の精神科リハビリに匹敵する伝統的医療を調査。さらに日本など文明国の若者に広がる心の闇にフィールドを広げ、グアテマラの内戦で傷ついたマヤの先住民族、女性らを支援する活動を通じ、ひきこもりから抜け出せずに苦しむ若者の回復支援のプログラムの開発、実践に取り組むようになった。
今回は48年間にわたる異文化圏の漂流人生を一冊にまとめた。宮西氏は「若いころは誰もが自分の人生について悩み、苦しみますが、人生の回り道は決してムダではなく、生き方を見つけるうえでとても大事なことであり、若い人たちが異世界に飛び込み、世界を知り、仲間と出会い、文化を超えた共通性を見つける一助になれば幸いです」と話している。
本は文芸社から1600円(税別)で販売中。アマゾン等で購入できる。
写真=48年間の異文化圏漂流体験を一冊に


