冬季五輪の熱狂が冷め、再び朝鮮半島の動きがクローズアップされている。北が韓国との融和をアピール、米国とも対話の用意があるとの姿勢を示しているが、米国は一貫、核の放棄なしには応じないとしており、両者のチキンレースも最終盤にさしかかりつつあるようだ。
 ワシントンを射程におさめるICBMの完成まであと一歩。北朝鮮にとって、先の冬季五輪は絶好の時間稼ぎの機会となった。南北統一チームの結成、美女応援団や管弦楽団の派遣、さらには実の妹まで送り込んで融和に前のめりの文大統領を操り、制裁を骨抜きにしようとしたが、米国の態度は変わらない。
 軍事行動も含めてあらゆる選択肢をテーブルに載せ、真綿で首を絞めるような経済制裁が続く。北の「米国との対話の用意がある」という動きもその効果の表れで、時間稼ぎのカードもネタが尽きたか、首脳の直接対話をちらつかせ始めた。しかし、米国はあくまでも非核化が条件、北はいよいよ追い詰められた。パラリンピック後の4月中旬がきな臭い。
 核開発の道を突き進み、破滅しかないことに気づきながらあとへは引けない北の将軍。北が核兵器国となれば韓国、日本も核武装かという話になる。何よりもそれを避けたいはずの中国は、半島危機よりも国家主席の任期撤廃を優先させ、己の個人崇拝に狂おしい。地位と権力に汲々となり、どちらも国民の生活、人権など知ったことではない。
 思想だけがあって感情がなく、人間性が失われた。必要なのは知識よりも思いやりであり、思いやりがないと暴力だけが残る――。78年前に公開された映画「独裁者」の有名な演説の一部。底知れぬ人間の欲望が、またも世界を恐怖に陥れようとしている。(静)