第63回青少年読書感想文コンクールで毎日新聞社賞を受賞した、和田小3年の上野桧生君を取材した。作品は内田美智子著「いのちをいただく」の感想である◆食肉センターで働く坂本義喜さんの体験がつづられた絵本。助産師で他にも命や食に関する著書のある内田さんが執筆し、何度かドラマ化された名作「家栽の人」などで知られる漫画家の魚戸おさむさんが絵を担当した。「みいちゃん」と名付けられ、かわいがって育てられた牛がセンターに来る。飼い主の女の子の悲しみを見た坂本さんは「仕事をやめようか」と悩むが、息子のしのぶ君は「心のない人がしたら牛が苦しむから、お父さんがしてあげて」という。感想文を読ませて頂いただけでも、内容の深さ、登場人物たちの誠実さ、心の熱さが伝わってくるようで、涙が出そうになった◆上野君は1年生の時、先生に読み聞かせてもらって涙が出た。3年生になって自分で読み、こみあげてきた思いを文章に書き、多くの人に読んでもらう。受け身でなく能動的な、素晴らしい読書活動である。表彰式では著者の内田さんのメッセージ、そして内田さん・坂本さん・魚戸さんの3人のサイン入り絵本「いのちをいただく」がプレゼントされた。実在する主人公の坂本さんが「いつかどこかで会いましょう」の言葉を贈っていたのが印象に残った。上野君の感想文は、型にはまったものではない自分自身の言葉で率直につづられていた。坂本さんにとっては、本を通じて心がつながったうれしさを感じる文だったのではないだろうか。「いつか会いたい」と思えるほど◆人に読まれ、人の心を動かして、初めてその本は本当に「生きた」といえる。人の心が込められているからこそ、本の力は距離も年齢差も超え無限に働く。(里)