御坊市民文化会館で開催された和田勇シンポジウムで講師を務めた博多の歴女、白駒妃登美さんは講演の冒頭、「私の話を聴いてもらえると、日本人に生まれてよかったと思ってもらえると思う」と話されたが、講演を聴き終えたとき、まさにそんな感情を持つことができた。和田さんの生き方を通じて強調されていたのは、日本人の生き方。中でも和歌山県人の遺伝子が和田さんを育んだという言葉は印象に残った。
引き合いに出したのは、明治23年にトルコ軍艦のエルトゥールル号が串本町で座礁した際、旧大島村の村民が総出で救助と生存者の介抱にあたったこと。さらに400年前、真田幸村を男にした九度山町民の惻隠の情だ。もう一人、例に挙げたのは箕島高校野球部の名将、故尾藤公さんの話。いまでも高校野球史に語り継がれる星稜高校との延長18回の熱戦の後日談を紹介された。
星稜1点勝ち越しで迎えた延長16回、ファールフライで試合終了かと思われたが、転倒して落球したのが加藤一塁手。後日行われた親善試合で尾藤監督が打席に立ち、一塁に打ち上げたフライを加藤さんがしっかりキャッチ。尾藤さんは駆け寄って肩を抱き「加藤今度はちゃんと取ったな」と涙で顔をくちゃくちゃにしたという。尾藤さんの人柄が心にしみた。
個人の夢はその人が亡くなれば消えてしまうが、世のため人のための志は誰かに受け継がれ、思いはその土地に残るとも。先人の思いを受け継いでいくのがいまを生きる者の使命だろう。先人がつないできた他人への思いやり、恩に報いる感謝の気持ち、日本人の美徳を持たねばとあらためて思わされた。 (片)

