先日、日高高校附属中学校で県立図書館の出前講座が開かれ、「ビブリオバトル」という本の紹介ゲームが紹介された。2人以上の紹介者がお勧めの本を5分間紹介し、2~3分の質疑応答を経て読みたくなった本に投票。チャンプ本を決める◆子どもの頃の夏休みに出会った本の中から今お勧め本を選ぶとすれば、2月に他界した佐藤さとるさんの著書「わんぱく天国」。時代は戦前、舞台は海軍基地のあった横須賀。隣り合った2つの地区の少年たちは伝統的にいがみ合ってきたが、ブームだった「一銭飛行機」を自分たちで作り、工夫して飛ばし合いを始めたことから様子が変わってくる。「協力して、人が乗れる飛行機を自分たちでつくって飛ばそう」となったのだ。聡明な委員長タイプの一郎、腕っぷしのつよいガキ大将タイプの明がそれぞれ中心となって研究を重ね、結果を持ち寄り、力を合わせて超小型グライダーを完成。一番体の軽い3年生のカオルをパイロットに、いよいよテスト飛行の時が訪れる...◆子ども心に大きな衝撃だったのは、最後に主人公たちのその後が書かれ、魅力的だった登場人物が成長ののち出征、戦死したとわかる部分。物語の世界は自分の世界、登場人物は自分の仲間のようなもので、死んでしまったことがひたすら悲しかった。その悲しみを文章につづるのは当時の言語能力では到底無理だったが、そうやって感情を揺さぶられた経験が心を耕し、育ててくれたのだろう◆世の中には無数の世界が存在しており、本はその扉になる。読書の楽しみを知ることは、無限大の扉の鍵を手に入れること。きっかけは宿題の感想文でも何でもいい。扉を開けて足を踏み入れた世界で、一生ものの宝を見つける夏休みになればいいと思う。 (里)

