幼いころ将棋を指して、負けて泣いた記憶がある。相手が祖父だったか父だったか、はっきりしないが覚えている。先日「うちのおじいちゃん」のコーナーの取材で、御坊市内に住む66歳の方も5歳の孫と将棋を指すという話を聞いた。その方は「まだまだ負けません」。一方、我が家では69歳の父が小学3年の孫に「真剣にやって負けた」と肩を落としていた。昨年ごろだろうか走るのも負けたそう。「もうあかんなー」と言いながらも、表情はどこかうれしそうで、孫の成長を喜んでいるように見えた。
将棋と言えば、いまをときめく藤井聡太四段の連勝記録が29で止まった際、先月に現役を引退した、「ひふみん」の愛称で親しまれている加藤一二三(ひふみ)九段がツイッターで送ったメッセージが話題になっていた。63年もの長きにわたって棋士として勝負の世界に生きた加藤九段だからこそ伝えられるといえよう言葉。まずは「棋士人生はまだまだこれから いま始まったばかり」という書き出しから、続けて勝負の世界を生きていく藤井四段に対して「勝負ごとには勝ちか負けの2択しかない。だからこそ常にその先にあるものを見据え、観る人々の魂を揺さぶる、後世に残る棋譜を紡いでいただけたらと思う」と声援を送った。
さらに、その次に投稿した「人生も、将棋も、勝負は常に負けた地点から始まる」。2度の20を超える連敗を含む歴代最多の1180敗を喫した加藤九段ならではの説得力がある。1324勝のうち90%が「名局」だったと引退会見で振り返っていた加藤九段の深い表現。「負けたあとどうするか」、筆者だけでなく多くの人にとって人生の糧にできる金言だったと思う。 (笑)

