二重課題(デュアルタスク)の処理能力とは、何のことだか分かるだろうか。例えば、「テレビを見て笑いながら皿洗いをする」「スーパーを歩きながら献立を考える」など。記者で言うなら、電話をしながらパソコンを打つとか、人の話を聞いてメモを取りながら頭で次の質問を考えるなど、2つ以上のことを同時に行う能力である。聖徳太子は7人や10人と同時に会話ができたというが、本当ならば二重課題処理能力が以上に高かったのだろう。
 先日、高齢者福祉施設の健康講座で、二重課題処理能力の説明があった。若いころは普通に備えている能力だが、加齢とともに衰えてくるそうで、そうなると転倒する危険性が高まる。転倒やそれに伴う骨折は、65歳以上の高齢者が要介護となる原因で上位に入っている。ちなみに何を根拠にしたデータか分からないが、歩行中に話かけられ、立ち止まってしまう高齢者は、6カ月以内に転倒する危険性があるとも指摘されていた。
 もちろん、転倒する原因は加齢に伴う運動機能の低下も大きいが、二重課題処理能力の低下も関与していることを1997年にスウェーデンの研究者が発表。以後、この能力を高めるトレーニングが考案され、高齢者の転倒、認知症予防に役立てられている。トレーニングの一例を挙げると、「簡単な計算をしながら歩く」「コップに入った水をこぼさないで歩く」など。ほかにも歯磨きしながら屈伸運動するとか、風呂で体を洗いながら明日の予定を考えるとか、自分でもいろんなトレーニングが考えられる。大した道具もいらず、簡単にできそうなので、高齢者はぜひ日常生活に取り入れてほしい。    (吉)