「すべての選択肢がテーブルにある」。米中首脳会談前の今月6日、トランプ大統領が電話で安倍首相にこう話した。北朝鮮の核ミサイル開発について、中国の習国家主席を念頭に、「中国が本気で北朝鮮への制裁を強めないなら、米国は独自の計画を立てる」という間接的な意志表示だった。
 その注目の首脳会談が始まる直前、トランプ大統領はシリアへのミサイル攻撃を命令した。化学兵器による空爆を行ったシリア政府軍の飛行場に、巡航ミサイル59発を発射。その後、大統領は習国家主席との歓迎夕食会に参加し、デザートを食べながら軍事攻撃の事実を明かし、理由を説明したという。
 「戦略的忍耐」というオバマ大統領の念仏のような理想主義がシリア、ロシア、中国、北朝鮮を増長させ、その弱腰を非難し続けたトランプ大統領としては当然の行動ともいえる。同盟国日本の私たちは、ここに世界が大きく変わった現実を認識しなければならない。
 化学兵器や核兵器は実際に使用せずとも、開発に成功した時点で自国の「力」を飛躍的に向上させる。同時にそれは他国を脅す力にもなり、その拡散の危険が叫ばれるテロの時代にあって、発射ボタンを握るリーダーがまともな国家のまともな人間とは限らない。日本にとっていままさに、そこにある危機である。
 シリア、南シナ海、ウクライナ...理想だけではどうにもならないことは、オバマ大統領が示してくれた。トランプ政権は、軍事にブレーキがない独裁国家の暴走を止めるには、その力を上回る圧倒的な軍事力と、それを躊躇なく実行できる決断力であることを示そうとしている。
 東アジアの危機はかつてなく切迫している。将軍様は正気に戻るか。日本はただ祈るだけで助かるのか。 (静)