日本一短いローカル私鉄で知られる御坊市の紀州鉄道で運行し、現在は引退して保管されていた「キテツ1号」が、有田川町の有田川鉄道公園へ譲渡され、14日に紀伊御坊駅からトレーラーで移送された。キテツ1号は日本でも数少ないレールバスとして希少価値の高い車両。鉄道公園では乗車体験車両として〝再出発〟することになっており、全国の鉄道ファンに人気を呼びそうだ。
 キテツ1号はもともと兵庫県の北条鉄道から譲渡を受け、平成12年から紀州鉄道で運行をスタート。その後平成21年からはキテツ2号も加わり、全国の鉄道で2両しかないレールバスが紀州鉄道にやってきたことで鉄道ファンには大きな話題となった。キテツ1号は走る力を十分残したまま約3年前に現役を引退。その後はキテツ2号が現役唯一のレールバスで地域の貴重な足として奮闘したが、信楽高原鉄道から平成27年に気動車SKR301号、ことし2月にもSKR205号の譲渡受けたことですでに引退が決まっており、日本で自走するレールバスは事実上姿を消す。
 有田川鉄道公園にたびたび顔を出していた紀州鉄道社員が、まだ走れるキテツ1号を車庫で保管しているのはもったいないと譲渡を持ちかけ、新天地での復活が実現した。同鉄道公園には岐阜県の樽見鉄道から譲渡されたレールバス「ハイモ180―101」が体験車両として走っていたが、故障等で自走が困難となっているのが現状。キテツ1号はハイモに代わって体験車両として活躍することになる。
 同公園は全国各地から年間約8000人が来場しており、中でも敷地内に敷いた約400㍍のレールの上を実際に走る乗車体験は人気メニュー。キテツ1号が走るレールバスとして復活すれば集客力アップにも期待が集まっている。14日に引き取りに来た有田川町商工観光課の梅本泰彦主任は、4月中のデビューを目指すとし、「キテツ1号は、北条鉄道、紀州鉄道に続いて第3の人生となる有田川鉄道公園では、看板カーとなるでしょう。多くのお客さんに親しんでもらいたい」と期待を込めていた。紀州鉄道紀伊御坊駅の大串昌広駅長は「少し寂しいですが、また走る姿を見られるのはうれしい。これを機に有田川鉄道公園と連携してイベントなどを開催し、和歌山の地方鉄道を盛り上げていきたい」と話している。