毎年2月19日頃は二十四節気の一つ「雨水(うすい)」。空から降るものが雨から雪に変わり、氷が溶けて水になり、草木が芽生え、春一番もこの頃から吹く。調べるとことしは18日だったが
 先月には当地方でも見事な雪景色が出現したが、初めて本格的な雪景色を見たのは学生時代、京都で暮らして1年目の冬。朝、窓を開けると駐車場も家々の屋根も一面に真っ白な布をかぶせられたようで、まさに別世界。静けさと清らかさに満ちた眺めにしばらく見とれた
 北海道出身の漫画家山岸凉子さんが幼い頃の思い出として、不思議な雪の話を書いていた。ごく稀に、雪の結晶がそのまま5㍉ぐらいに大きくなったようなきれいな雪が、ヒラヒラ降ってくることがあった。山岸さんはそれに気づくと、黒いセーターに着替え外へ飛び出す。服に着いた雪の白い結晶が模様のように黒に映え、それはきれいなのだそうだ
 「北越雪譜」という、雪国越後(新潟)の昔の暮らしを書いた本があるが、南国では想像もつかない素晴らしい眺めが紹介されている。2月の初めに陽気がよくなると、大きな川一面に張った氷が自然に裂けて流れる。明け方に裂け始めて夕方には流れ終わるが、三十四里の氷がすべて砕ける轟音は「千雷のようで、山も震える」感じだという。大小幾万の氷が水晶の盤のように、藍色の波に乗って流れる様は壮観である、と
 特別に寒い日の夜空は、くっきりと澄んで格別に美しい。厳しい季節にはその季節ならではの贈り物がある。嫌なニュースの続く昨今、せめて自然の美しさから心に潤いをもらいたいものだと思ってしまう
 春に向かう季節とはいえ、それまでに寒さは何度も戻ってくる。季節の変化には風流心だけでなく用心も必要だ。   (里)