ことし4月から通っていた歯医者での治療が、終わった。激痛の原因となった奥歯の根幹治療は5、6回で終わったが、その後もちょっとした虫歯の治療をしたり、銀を詰めていたところをやり直したり。いまでは歯の状態がすこぶるいい。
 それにしても20年ぶりに通った歯医者での治療方法の進歩にちょっとびっくり。歯のレントゲン写真が立体的に見えたり、パソコン画面で治療前と治療後の変化を見せてくれたり。特にうれしい驚きは麻酔注射が全く痛くないこと。昔は普通の注射針で恐ろしく痛かったが、いまは「電動式」らしく、まるで痛みなし。もちろんその医者の腕のよさもあるのだろうが、歯を削ったりするほかの治療を含めて、今回の歯医者で痛みを感じたことはほとんどなかった。
 筆者自身、小さいころの歯医者の痛みがトラウマのようになっていて、歯医者は苦手だった。だからついつい日ごろの歯の痛みを放っておいて今回は悪化してしまったのだが、これだけ歯の治療が痛くないようなら、早めに歯医者に行った方がいい。もちろん、できることなら歯医者に通わなくてもいいように、毎日のケアが大切なのは当然である。
 そんなことを言いながらも、歯の治療が終わってしまうと、まるで歯茎にナイフでも突き立ててぐりぐりされるような激痛で、眠れぬ夜を過ごしたあの経験を忘れつつある。人の脳は〝上書き保存〟されるようで、筆者の場合は痛い思い出が、治療後の歯の快適さに塗り替えられている。そうなると日ごろの歯のケアを怠ってしまうもの。だからこそ、なるべく歯痛の恐怖を頭に焼き付けておいて、自分への戒めにしようと思う。 (吉)