日本一短いローカル私鉄の紀州鉄道㈱社員で紀伊御坊駅長の大串昌広さん(51)=御坊市湯川町財部=が、50歳11カ月で国家資格の動力車操縦者運転免許を取得し、運転士デビューを果たした。家業の精肉店を切り盛りしていたが、鉄道好きが縁で2年前に紀州鉄道に入社。仕事が終わったあと一日8時間勉強するなど努力を重ね、初挑戦で見事合格した。「子どもの頃からの夢がかないました」と笑顔があふれている。
 7年前に中井貴一主演の映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』が公開されたが、映画をも上回る50歳での運転士誕生に、関係者からは「すごい」の声も上がっている。
 幼稚園のころから鉄道(汽車)好きで、運転士になるのが夢だった。御坊商工を卒業後、鉄道関係の仕事にと大阪市営地下鉄(大阪市職員)に入職。駅員として切符の販売などをこなし運転士への階段を上り始めたが、家業の「たからや精肉店」(湯川町財部)を継ぐため21歳で故郷に戻ってきた。鉄道は趣味の一つとして、父と一緒に家業に没頭していたところ、9年ほど前、市役所からの一本の電話がきっかけで再び鉄道の仕事に携わることになった。紀州鉄道東京本社の課長が、ローカル線を盛り上げるため地元で協力してくれる人を紹介してほしいと市役所に依頼。大串さんが鉄道ファンだと知っていた職員から電話が入り、紀州鉄道とつながった。機会あるごとにボランティアとしてイベントの企画等に協力してきた大串さんは、2年余り前、正式に社員となり、紀伊御坊駅長として日々の仕事、他府県での鉄道イベントに出店してグッズ販売やPR活動を行うなど多忙な毎日を過ごしている。鉄道の仕事に就き、再び運転士という夢を抱きはじめ、昨年秋ごろ、試験に挑戦することを決心した。
 参考書等がないため、知人らに頼んで業界誌に掲載されている過去10年分の問題を地道に集め、必死で勉強。ことし3月に法規、運転理論、車両構造と機能などの筆記試験に臨み一発合格。続いて6月に行われた実技試験も見事パスし、国土交通省発行の動力車操縦者運転免許の甲種内燃車(ディーゼル車)の運転資格を取得。憧れだった運転席で車両を走らせた。いまも駅長の仕事をこなしながら週に一日ペースで運転している。「夢がかなってよかったですが、人の命を預かってハンドルを握りますので、思っていた以上に神経を使い、緊張感が張り詰めています」とうれしさと責任の重さをひしひしと感じている。「人生の一つの目標を達成できたのも、同僚や先輩、多くの人に助けていただいたおかげ。運転士としては安全運転に努め、駅長として紀州鉄道を盛り上げられるように頑張りたい」と話している。