県、県教育委員会、美浜町主催の平成28年度津波防災講演会は3日、美浜町吉原の松洋中学校で開催。東日本大震災の「釜石の奇跡」の立役者、群馬大学大学院理工学府教授の片田敏孝氏が「巨大津波想定に向かい合う~和歌山県の地域防災教育を考える~」をテーマに語った。片田教授は、「巨大想定の数字に必要以上におびえず、できることを精いっぱいやっていざという時にしっかり逃げることのできる子を育てよう」と災害への心構えを訴えた。
冒頭では、仁坂吉伸知事がことしから始まった「世界津波の日」に触れてあいさつ。地元の森下誠史町長のあいさつに続き、自民党幹事長で「津波の日」制定を提唱した二階俊博代議士のビデオレターが紹介された。
片田教授は、東日本大震災時に小中学生3000人のほぼ100%が助かった「釜石の奇跡」を、それまでの防災教育によって導き出した人物として知られる。今回の講演では、内閣府の津波の新想定について「美浜町は18分後に高さ18㍍の津波が到達するという想定だが、『もうあかん』としょぼくれる必要はない。これは1000年に1度という規模の地震が起こった場合の想定で、次の地震でこんな津波がくるという意味ではない。数字を必要以上に恐れずあなどらず凛として向き合い、今できることを精いっぱいやって『きょう起こっても大丈夫』と思えるぐらいの心構えを」と災害に対する姿勢を訴えた。
釜石の奇跡について「成功例のように語られるが、実は釜石市では直接の犠牲者993人、関連死105人、行方不明者152人という被害が出ている。自然は恵みも災いももたらす存在。『こんな恐ろしいことが起こるかもしれない町だ』と子どもたちを脅す防災教育でなく、ふるさとに誇りを持って生き、ことが起こった時には『津波なんかに負けるか』としっかり逃げて自分の命を守れる、そういう知恵を持った子を育む環境が必要。自分の命をまず守ること。自分が率先して逃げることで他の人も逃げる」と強調。「釜石市で実践したのは『脅し』でも『知識』でもなく、『姿勢』の防災教育。知識があっても、主体的に動く姿勢が育っていなければ正しく動けない。釜石の子どもたちはすぐ逃げるという姿勢を身につけたおかげで、助けられる人から助ける人になれた」と、中学生達が途中の施設で踏みとどまらず、保育園児やお年寄りも助けながら最も高い土地まで逃げ切った当時の状況を説明。「人を思い合う、そんな地域をつくっていくことが防災」と話した。

