いまから25年前、桑田佳祐が「アコースティックレボリューション」という全曲洋楽カバーの伝説のライブを行い、ボブ・ディランの「時代は変わる」と「風に吹かれて」をうたった。
 ビートルズやクラプトン、ツェッペリンなどに続き、「反戦歌っていう言い方は好きじゃねえんだけど、(湾岸戦争など最近の出来事に)ちょっと感じるところもあって」「日本人のアイデンティティはどこへいったんだぁ...」と笑うMCは、四半世紀が過ぎたいまも響く。
 そんな桑田は海外のロックにかぶれ、子どものころに聴いた日本の昭和歌謡を心から愛しつつも、「フォークソングは大嫌いだった」らしい。しかし、「和製ボブ・ディラン」と呼ばれた吉田拓郎だけは好きで聴いていたという。
 60年代から70年代にかけて、日本は政治と経済、輸入ものの流行も目まぐるしく、音楽の世界にもさまざまなスターが登場した。もじゃもじゃ頭でギターをかき鳴らし、叫ぶようにうたう拓郎は多くの若者の心をつかみ、桑田はスタイルよりも音楽づくりに刺激を受けた。
 31年前のサザンオールスターズのアルバム「KAMAKURA」には、当時、ライブ引退を宣言した拓郎への応援歌が収録されている。静かなメロディーも桑田の詞は激烈で、消えようとする憧れに対する憎しみのような悲しみ、愛憎半ばの想いがうたわれている。
 人生の価値は,どれだけ多くの人に影響を与えたかで決まるという人もいる。世界中の同世代に衝撃を与え、75歳となったいまなお第一線を走り、転がり続けるボブ・ディランにとっては、ノーベル賞など本気でどうでもいいのかもしれない. (静)