全国的に水産業は漁獲量の減少、価格の低迷、燃油価格の高騰、従事者の高齢化、後継者不足で厳しい環境にあり、近年、注目されているのが「つくり育てる漁業」。漁礁の造成や種苗生産、放流、養殖などで、これまでのように海にある資源をとるだけでなく、自分たちの手でまさにつくり育てるのである。いってみれば野菜や果物を栽培する農業と同じ。和歌山県内では近大の養殖クエなどが成功例と言える。
そんな中、日高町の比井崎漁協が日高地方で初めて、ナマコの種苗生産・放流事業に乗り出したのは既報の通り。卵の採取からふ化、育成までを一貫して行う取り組みで、いまのところ卵からふ化させて順調に育っており、7月にも地元の海に放流できるという。「海の黒いダイヤ」と呼ばれるナマコで、漁業者の収入安定を目指すのが目的。漁協としては地元の新名物として売り出すようなことまでは考えていないが、将来的にその方向を検討していっても面白いのではないだろうか。
実は、先日の記事では書いていないが、卵は120万匹あったのだが、特設水槽の許容量があるため、利用したのは20万匹だけ。つまり、設備さえ整えばもっと種苗生産量を増やすことが可能で、それこそ設備があれば大きくなるまで完全養殖という方法もできる。さらに夢を膨らませるなら、ナマコ乾燥の加工所なども整備して販売ルートを確保。1次産業従事者が加工、流通、販売に携わる6次産業化の取り組みとしても、地場産業の振興や雇用創出につなげられるのではないだろうか。いずれにせよ、まずは初放流まで順調に育つのかどうかが課題だが、今後の取り組みに期待したい。(吉)

