紀州日高漁業協同組合(松村德夫組合長)が、来年3月にも由良町戸津井と小引の海に群生する天然の海藻の一種「アカモク」を新産品として販売する。近年、独特の食感と豊富な栄養素が注目され、全国的には商品化しているところもあるが、和歌山県内では初の試み。以前から漁船などの〝海の邪魔者〟となっていたアカモクの有効活用に期待がかかる。
 アカモクはホンダワラ科に属する海藻。1年生で、秋から冬にかけて成長し、長さは4~7㍍になる。ゆがいて細切れにして食べるとネバネバコリコリした食感があり、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルがワカメやモズクに比べて圧倒的に多いのが特徴。ポン酢をかけたり、うどんに乗せたり、玉子焼きに混ぜるなど、さまざまな料理方法があり、近年健康食品として注目され、神奈川、秋田、山形県などでは食用にされている。
 由良町の戸津井と小引の海は、水温や潮の流れ、自生する小さい石などの環境が適しているのか、以前からアカモクが群生しているのは知られていたが、漁船のスクリューに絡まるなどで邪魔者扱いされていた。そんな中、地元では3年前から藻場造成事業でカジメの増殖をしていたが、なかなかうまくいかなかったこともあり、アカモクに着目。2年前からアカモクがより一層自生するよう、小さい石を投入するなど、藻場の造成も進めている。ことし6月には県の水産試験場などの協力で海底も調査。至るところにアカモクが群生していることを確認した。加工は衣奈の水産加工処理施設を活用。今後、ゆがいて真空パックにするのか、生のまま冷凍するのか、乾燥させるのか、またパッケージや価格設定はどうするのかなどを検討し、来年3月にも商品化を目指す。また、漁協婦人部の協力でアカモクを使った料理レシピの開発も進めたい考え。紀州日高漁協戸津井支所の地区筆頭理事を務める中村和孝さんは「水揚げは船の上からでき、魚の漁をするよりも労力がいらず簡単。地元では個人の乱獲を禁止するよう申し合わせており、組合員が水揚げして、漁協が買い取って販売する流れ。由良にはワカメやヒジキの特産もあるが、新たな産品として地場産業の振興に役立ってくれれば」と期待し、「商品ができれば、まずは朝市で無料試食してもらうなどでPRもしていきたい」と話している。