第二次世界大戦下、リトアニアの領事でありながら日本政府の方針に背き、ナチスに追われるユダヤ難民にビザを発給し、6000人の命を救った外交官杉原千畝の半生を描いた映画が完成した。主人公の千畝を演じるのは唐沢寿明、その妻幸子は小雪。戦後70年記念として、12月5日から全国公開される。
 昭和15年7月、リトアニアの日本領事館にビザを求めるユダヤ系難民が殺到した。日本政府はドイツを刺激しないよう、ビザを発給しないよう通達するが、千畝は人道上、難民を見捨てることはできないと、家族の理解も得て、独断で「命のビザ」を発給し続けた。
 同じように、ドイツではナチス党員でありながら、ナチスの迫害から多くのユダヤ人を救った実業家オスカー・シンドラーがいた。22年前、映画賞を総ナメしたスピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』で世界に知れわたり、以降、千畝は「日本のシンドラー」と呼ばれるようになった。
 死に直面しながら行き場を失い、絶望の淵に立たされた人を見たとき、自分は何をなすべきか。いまから125年前、串本町の樫野埼沖で起きたトルコの軍艦エルトゥールル号遭難事故では、600人以上の乗組員が荒れ狂う海に投げ出され、地元の村人が総出で救助にあたった結果、69人の命が助かった。この真実の物語も今年、『海難1890』というタイトルで映画化され、『杉原千畝』と同じ12月5日から公開される。
 串本の人たちの献身はトルコで語り継がれ、のちのイラン・イラク戦争でイランに取り残された邦人の救出劇へとつながったが、それはもちろん、串本の借りがあったからではない。杉原やシンドラーと同じく、困った人には手を差し伸べるという真心こそが世界を変える。  (静)