紀の国わかやま国体の取材ではあちこち駆け回ったが、特に剣道の活躍が印象に残った。
 地元選手がメンバー入りしていたのは少年男子と成年男子で、それぞれ1選手ずつ。県選抜は、両部門とも序盤から過去に優勝経験のある強豪との対戦が予想されたため、上位入賞は難しいのではないかとの見方も少なくなかった。大会が始まると、少年男子は東京都、熊本県、福岡県を次々と破り、決勝では長崎県に惜敗したが準優勝。成年男子は三重県、北海道、岡山県、徳島県、京都府、愛媛県にいずれも快勝、見事初の日本一に輝いた。
 少年男子の先鋒で「チームに流れ、勢いを持ってこれるように必勝を期したい」と大舞台に臨んだ橋本海斗君(日高高3年)。自身は4試合全勝で、先陣の役割を果たした。成年男子の副将を務めた田中紀行さん(日高高教諭)は「とにかく日本一に貢献を」と6試合戦い、4勝2引き分け。初戦の副将戦は25秒で終わらせ、チームの勝利を決めた。2回戦では世界選手権優勝経験のある選手と引き分けと、健闘が光った。
 橋本君は中1から国体の強化選手指定を受け、「その期待に応えたい」と5年半余りもこの大一番を目指して頑張ってきた。田中さんも「まずは勝つことが一番」と、早くから日本一に向けて稽古に打ち込んできた。勝負の世界で大きなことを口にするのは余計なプレッシャーを自らに背負わせることになるので敬遠する選手も多いが、2選手とも「有言実行」の素晴らしい結果を残した。
 日本一、準優勝は、いずれも県勢過去最高の立派な成績。それ以外にも、目標を定め、目標に向かって全力投球することの大切さを多くの人たちに伝えた「一本」にあらためて拍手を送りたい。(賀)