赤とんぼが飛びかい、朝夕は少し涼しくなったとはいえ、まだしばらくは厳しい残暑が続く。記録的な猛暑の今年、身近にも熱中症になった、なりかけたという話を聞いたが、ビールやエアコンの売れ行きを想像すると、景気の熱も大いに上昇したのでは。
 「夏」という言葉を聞いたとき、人はそれぞれさまざまなイメージや出来事が頭に浮かぶ。友人は夏、とくに暑い夏といえば、松本清張原作の映画『砂の器』で、丹波哲郎と森田健作が演じる刑事2人が聞き込みを続けるシーンを思い出すという。
 クールビズが定着したいまでは、真夏にネクタイというだけでちょっと懐かしく、桂枝雀のいう「お日ぃさんが、カーッ」のような炎天下、陽炎ゆれる線路沿いを汗だくになって歩く姿は、どこかノスタルジックで印象的。蝉しぐれや風鈴の音、花火など、映画やドラマで刷り込まれた日本人の夏のビジュアル的な季語は、他のどの国民よりも多いだろう。
 現実の出来事も記憶の付箋で、別の友人は夏と聞いて、昭和60年の夏が最も"熱く"忘れられないという。阪神ファンの彼は当時中学3年。4月にバース、掛布、岡田のバックスクリーン3連発があり、6月には豊田商事会長の刺殺事件があり、8月には日航ジャンボ機が墜落。その2日後、甲子園では桑田・清原のPL学園が29―7で東海大山形を下し、10月には阪神が21年ぶりのリーグ優勝を決めた。個人的にもいろんなことがあったそうだ。
 今年も記録的な暑さのうえに災害や事件の大きなニュースが多く、阪神は長期ロードをまさかの勝ち越しで乗り切った。30年前の夢よ再び、将来、夏の猛暑が10年ぶりのリーグ制覇、日本一という記憶のタグになることを期待。  (静)